増山士郎 「ジャコウウシのために、角カバーを編む」現代美術製作所

増山士郎 「ジャコウウシのために、角カバーを編む」現代美術製作所

名称:増山士郎 「ジャコウウシのために、角カバーを編む」現代美術製作所
会期:2024年3月8日(金)〜2024年3月24日(日)
会場:現代美術製作所
開館時間:12:00 〜 19:00
休館日:月曜日、火曜日
    3月20日は開場
オープニングパーティー:2024年3月8日(金) 19:00 から 21:00 まで
入場料:無料
住所:〒602-0065 京都市上京区挽木町518 路地内
TEL:072-245-6201
URL:ANEWAL Gallery 現代美術製作所

現代美術製作所では、3月8日(金)から24日(日)にかけて、英国・北アイルランドのベルファストを拠点に、世界各地を舞台に活動するアーティスト・増山士郎による個展〈ジャコウウシのために、角カバーを編む〉を開催します。この作品は、増山士郎が2012年から制作を続けてきた一連の「セルフ・サフィシェント・ライフ」プロジェクトの新たな展開として、2023年にアメリカ合衆国のアラスカとグリーンランドの2カ国を旅しながら制作された映像作品です。
なお、今回の京都・上京区の現代美術製作所における展覧会に合わせ、東山区の単子現代においても、増山士郎の個展〈群盲象を評す〉が開催されます。そちらでは、同じく2023年、インドにおいて象と関わりながら実施したプロジェクトの映像を上映いたします。
「セルフ・サフィシェント・ライフ」のシリーズは、増山士郎が2011年の東日本大震災と原発事故から受けた深い衝撃から、資本主義や消費社会をベースにした現代文明のあり方を問い直すプロジェクトとしてスタートしました。アイルランドでは、衰退した羊毛産業の技術を使い、羊の毛でセーターを編み、それを羊に着せてみたり、ペルーでは、アルパカの首の毛を刈りマフラーを制作、それをアルパカの首に巻いてみたり、またモンゴルでは、フタコブラクダの毛を使って鞍を作り、ラクダと一緒に旅をするなど、「自給自足」というコンセプトを通し、さまざまな場所で、現地の住民や動物と関わりながらプロジェクトを展開してきました。
主に現代社会の「周縁」にあたる場所で行われるこれらのプロジェクトでは、増山士郎がいわゆる「先進国」において経験してきたアーティスト・イン・レジデンスでの常識がほとんど全く通用しません。「セルフ・サフィシェント・ライフ」のシリーズでは、それぞれ言葉も文化も自然環境も異なるだけでなく、もちろん現代アートという「共通言語」も持たない現地の人々に対し、アーティストである自分の意図をていねいに説明して理解と協力を求めつつ、動物とのプロジェクトを実現してゆくまでの様子を、増山自身が記録した映像によって表現しています。手持ちカメラによる映像は、ときにブレたり、ピントが外れたり、音声が遠くなったりしますが、それゆえに四苦八苦する現場の状況をリアルに伝えるドキュメントとなっています。
今回の〈ジャコウウシのために、角カバーを編む〉の制作にあたり、増山士郎は、絶滅に瀕している野生動物・ジャコウウシを求め、初めて北極圏にまで足を伸ばしました。「これまでで最も過酷なプロジェクト」と増山が語る通り、作品の後半では、現地の協力者であるイヌイット3名とともにパーティーを組んで小舟に乗り、氷に閉ざされた北極海で野生のジャコウウシを探しながら彷徨する姿が映し出されます。鑑賞者は映像を通し、移民と先住民の間にある微妙な壁や差別、家畜化された動物と野生動物の対比、経済のグローバル化とそれが伝統文化やコミュニティに及ぼす影響、そして人間を拒む圧倒的なスケールの自然を前にした際の「自分は何のために表現をするのか?」といった本質的な問いを含め、増山が旅のプロセスで出逢ったさまざまな出来事や経験を追体験することでしょう。
どうぞこの機会に、京都で現代美術製作所と単子現代の両会場を巡り、アラスカとインド、二つの対照的な土地で増山士郎が実施した、2つのプロジェクトをご覧いただければ幸いです。

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