「酒井忠康への手紙」市立小樽美術館

「酒井忠康への手紙」市立小樽美術館

名称:「酒井忠康への手紙」市立小樽美術館
会期:2024年9月28日(土)〜2025年2月2日(日)
場所:市立小樽美術館
開館時間:9:30 〜 17:00
休館日:月曜日
   祝日は開館し翌日休館(翌日が土曜日・日曜日・祝日の場合は開館)
住所:〒047-0031 小樽市色内1丁目9-5
TEL:0134-34-0035・FAX:0134-32-2388
URL:市立小樽美術館

 一原有徳は、生涯に多くの手紙を書き筆まめな一面がありました。個人的なやり取りの手紙には、書かれた背景、その時置かれていた状況、心の内をうかがい知ることができ非常に注目されます。高名な美術評論家であり神奈川県立近代美術館長、世田谷美術館長を歴任した酒井忠康に宛てて、一原は、膨大な葉書、書簡を綴っており、このたび手許に保管されていた書簡類が一括酒井氏から当館へ寄贈されました。
 酒井との長い交流が重ねられたのは、ある2人の人物が一原と密接に関わっていたためです。酒井の恩師・土方定一、もう一人は酒井の母方の叔父・山本茂です。書簡はその因縁に深く遡ります。
 土方定一(1904-1980)は美術評論家の草分けとして「ブリューゲル」「天心」「岸田劉生」等々を刊行、さまざまな展覧会を開催し、長く美術界に君臨した巨人です。戦後、偶然一原有徳のモノタイプを発見した土方はその作品に魅せられ、1960年東京画廊の個展を斡旋し世に送り出しています。以来、神奈川県立近代美術館には一原作品が多数収蔵されるに至りました。
 土方の没後、遺言のように託された酒井が、作品を系統立て、同館の新館で1988年「現代版画の鬼才 一原有徳展」を開催しています。一原を世に送り出したのは、確かに土方でしたが、加えて100歳に至るまで意欲を失わず、制作を継続できたのは、酒井の存在によるところが大きかったといえるでしょう。一原は、自分はアマチュアで、評論家によって育てられたと自認しており、土方亡き後に教えを請う人物は酒井以外にあり得なかったのです。
 酒井は小樽の隣町である余市町の出身です。慶應義塾大学卒業後、学芸員として土方の薫陶を受け側近的な役割を果たしていた修業時代に、小樽の版画家・一原有徳と知り合いました。同郷の親近感だけでなく、酒井の叔父・山本茂は小樽地方貯金局の一原の親友でもありました。山本茂は、職場(貯金局)の美術部の仲間でパステル画の名手でしたが、貯金局の中間管理職の立場から組合運動の犠牲となり、若くして世を去っています。同僚としてその悲劇を見て来た一原は、憎悪と無念を生涯抱えていました。これらのことは、酒井と一原にしか心底わかりあえない内容です。
 本展では、酒井忠康から寄贈を受けた書簡の一部を紹介するとともに、土方定一との出会い、山本茂との友情、登山事故後、酒井忠康が企画した「一原有徳展」の各時代に注目し、一原有徳の作品の変遷を追っていくものです。

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