「川嶋渉展 粒の表情 −現象− particle expression -GENSHO-」日本橋三越本店

現象 No.37」27.3×27.3 cm 楮紙/墨 

名称:「川嶋渉展 粒の表情 −現象− particle expression -GENSHO-」日本橋三越本店
会期:2023年4月12日(水) ~ 2023年4月17日(月)
会場:本館6階美術特選画廊 最終日午後5時終了
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店

「現象 No.15」90 × 61cm 楮紙/墨 
「現象 No.15」90 × 61cm 楮紙/墨 

「応接間から出られなくなった日本画」
床間から応接間へと生き場を移した日本画。
更なる心地良い場所へと彷徨い歩く。 もっと軽やかであっても良いと私は考える。
川嶋渉

「粒の表情 – 現象 -」では、川嶋渉の日本画における新たな展開を目の 当たりにすることができる。 2019 年に行なわれた個展「粒であり波である」というタイトルに も登場する「粒」(絵の具の粒子)が、今回の展示でも中心的な役割 を果たしている。粒子は、和紙や膠などと相互作用して一つの絵を、 つまり、こちらに語りかけてくるようなたたずまいを作り上げている。
川嶋の日本画に、鑑賞者はいろいろなイメージを読み取るだろう。 しかし、これらの作品は必ずしも写実的ではないので、実際に読み取 られる内容は一様ではない。仮にある作品を川だと大半の人が認識し ても、それがどんな川であるかという具体的な内容は、その人の知識 や経験、文化的な背景、感覚のあり方などによって違ってくる。
メディウム同士がうまく相互作用する状況を設定することで生み出 された創作物は、見る者の感性によって認識される。こうした制作 – 鑑賞のあり方を、川嶋は「現象」というカント(Immanuel Kant)的 な語彙で捉えている。この展示空間にあるのは、そうした絵画の認識論 に則ったアウトプットであり、これは近代芸術の常識を裏切っている。
近代芸術においては、「作品」という閉じられたイメージが前提され ている。作者のコントロール下で「作品」は完成され、鑑賞者は閉じ られた円を眺めるように完結した創作物を味わう。「作品」の秘密は、 創造者たる作者が握っており、鑑賞者は、創作者の殿堂に恭しく入り 込んで秘密を読み解こうとする。
だが、そうした創造物だけが作品の名に値するのだろうか。作者の 手だけで完結しない創作物も、作品たりうるのではないか。
川嶋の日本画作品は、それ単体で自存するものではなく、物質や人間 といった他者との相互作用によってはじめて成り立つ — 現象する — ものだと言える点で、この問いかけの先に行こうとしている。
哲学者 谷川嘉浩

現象 No.27」45.4×15.8 cm 楮紙/墨 
現象 No.27」45.4×15.8 cm 楮紙/墨 
現象 No.37」27.3×27.3 cm 楮紙/墨 
現象 No.37」27.3×27.3 cm 楮紙/墨 

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