名称:「MIAGGOORTOQ ミアゴート」AL Gallery
会期:2023年10月27日(金)~11月5日(日)
会場:AL Gallery
時間:12:00-19:00
住所:〒150-0022東京都渋谷区恵比寿南3-7-17 KiKi Bldg.1F,2F
TEL:03-5722-9799
URL:AL Gallery
本作品展は写真家 遠藤 励が2017年より継続しているプロジェクトからの企画展です。
プロジェクトの骨子は、北極先住民の現在を写真に記録することです。
しかし、それは単に北極や先住民族の姿をアーカイブとして残すだけではなく、被写体である現地住民との信頼関係や、現地での彼らとの生活経験を通して、その深層心理に触れ、理解し、それらを作品化することで明らかにしていきます。これまでに遠藤 励はグリーンランドとシベリアの北極圏を訪れ、先住民との交流を重ねています。
■作品ステートメント
地球の自然、そして天文学的な宇宙のサイクルと直結した「狩猟採集」による暮らし。それは人類誕生から我々が歩んできたであろうルーツの姿である。極北先住民に導かれた現代の狩猟生活の体験から、私は獲物から流れる生々しい血を次第に美しいと感じ始めた。それが本能的なものなのか、彼らの文化への理解からくるものなのかを自問した私は、自分の生活が血を見ない「仕組み」の中で生きていることに気がついていった。本作は原始的な「生物本能」と生活の環境から形成される「概念」との考察である。なお、「MIAGGOORTOQ」とは現地の言葉で犬の遠吠えを意味する。
作品背景
日本には「いただきます」という言葉がある。語源の一つに「食物(あなた)の命をいただいて、私の命をつなげさせてもらいます」という食物連鎖への尊ぶ想いがこめられている。農耕や牧畜が始まる以前の太古の昔、人間は狩猟採集をしながら生きてきた。そんな遥か昔に長い年月をかけながら地球上の最も遠い地域まで渡った人々がいる。グリーンランドに暮らすイヌイットは私たち日本人と同じモンゴロイドで、最北のエリアでは60年くらい前まで定住をせずに狩猟生活を営んでいた。野生動物を狩り、その肉を食べて暮らす。それは地球という大きな生命体の一部として生きる人類ルーツの姿でもあった。定住と近代化が進み、多くのイヌイットは狩りをしなくなったが、まだ一部の人々は狩猟を中心とした生活を続けている。遠藤は2018年よりグリーンランドへ遠征を始め、これまでに4度の渡航と述べ6ヶ月以上の取材を行っている。消滅集落に滞在したり、あるときはイヌイットの家族たちと犬ぞりで狩りや旅に出かけたりもした。そんな中で、白熊やイッカク、セイウチなど目撃が極めて困難な狩りの瞬間にも立ち会うことになった。極北の自然の中に狩りに出かけ、獲物を「獲る」、「食べる」、また「副産物の活用」までの一部始終を自らの責任で行う。北極民の狩猟生活は我々が普段意識することの薄れてしまった「命をいただく」ということの意味を生々しく体現していた。
作家プロフィール
遠藤 励(えんどう つとむ)写真家
大衆スポーツとなる以前のスノーボードの黎明期を目撃し、90年代後期から国内および世界のフリースタイルシーンに携わり、国内・北米・欧州のボードカルチャーの専門誌やメディアに作品を提供。また、2007頃より雪にまつわる作品表現に傾倒し、「snow meditation」や「水の記憶」などの雪や氷河の作品シリーズを発表。近年は北極圏へ の遠征を重ね、ドキュメンタリー撮影を継続。現地で急速に進行す る気候変動が及ぼす生態環境への影響、原始的民俗の変遷を記録し続ける。長野県・大町市出身・在住。
作品集に「inner focus」(小学館)、「Vision quest」(自主制作)がある。
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