名称:「工芸教育の精華 – 納富介次郎とデザインの思想 – 」石川県立歴史博物館
会期:2022年7月23日(土)~2022年8月28日(日)
時間:9:00~17:00(展示室への入室は16:30まで)
会場:特別展示室 企画展示室
観覧料:一般1,000(800)円 大学生・専門学校生800(640)円 高校生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金 65歳以上の方は団体料金
*常設展もあわせてご覧いただけます
*加賀本多博物館は別途観覧料が必要です
*電子チケットもご利用いただけます
主催:石川県立歴史博物館
特別協力:北國新聞社
住所:〒920-0963 石川県金沢市出羽町3-1
TEL:076-262-3236
URL:石川県立歴史博物館
ニューヨークにかつてあった高峰譲吉博士の別荘である「松楓殿」で、博士が生涯愛用した椅子。当時、山中商会では村上九郎作(号:鉄堂)が美術部指導師範をつとめており、百余名の職工を集めて輸出用家具制作を指揮していた。本作は、明治37年にアメリカで開催されたセントルイス万国博覧会において「日光式展示室」内で使用され、建物及び邸宅用装飾品及定着家具部門で最高賞を受賞しており、当時世界各地で流行したアール・ヌーヴォー様式を椅子のデザインに応用した意欲作である。
金沢工業学校(石川県立工業高等学校の前身)は、日本で最初の工芸とデザインを専門的に教育する学校として、明治20年(1887)に石川県勧業博物館の一部を仮校舎として開校しました。納富介次郎を初代校長として迎えたこの学校は、日本の伝統的なものづくり思想に西洋のデザイン思想を融合させた創造的なカリキュラムにより、多彩な工芸・デザイン教育を展開します。その結果、石川の工芸は今日工芸王国と称されるまでに発展を遂げ、日本の工芸文化を先導する役割を担うまでになりました。
本展は、金沢工業学校の開校以降、石川県にゆかりのある工芸教育者たちにより制作された作品や図案、図書資料等を一堂に展示することで、工芸王国石川が誇る先進的な工芸・デザイン教育の全容と、各時代の教育者たちがもつ教育理念や工芸文化に対する想いなどを理解して頂くことを目的に開催するものです。
明治20年(1887)に開校した金沢工業学校で、納富介次郎(号:介堂)とともに教鞭をとった友田安清が制作した赤絵金彩壺。友田は、県内外各産地で陶磁器の上絵と釉薬改良指導にあたるとともに、実弟の吉村又男とともに「友田組」をおこし、良質な釉薬を全国各地の窯業産地に供給した。また、日本硬質陶器(ニッコー株式会社の前身)の設立にも関わり、技師長として高品質な磁器を世界各地に輸出した。
和田がデザインし、納富が修正を施した図案をもとに村上が彫ったとされる《二匹鯛》盆。和田は石川県工業学校で納富に学び、卒業後は新設された富山県工芸学校と香川県工芸学校で教鞭をとり、香川県工芸学校では離任した納富に代わり校長心得をつとめた。納富の依頼を受けて様々な工芸品のデザイン開発に携わり、石川県のみならず全国各地の工芸品のデザイン力向上に尽力した。《二匹鯛》には様々なバリエーションがあるが、現在も富山県を代表する工芸品である。
第1章 工芸教育の黎明
開校当初の金沢工業学校は、専門画学・美術工芸・普通工芸の3学部からなり、納富介次郎により招聘された優秀な教員たちによって最先端の教育が実践されました。この学校で生徒たちは、教師の技術や理論のみならず、人間性や生き様までをも参考にし、作家として大きく成長していきました。本章では、開校当初から石川県立工業学校と改称されるまでの期間中に教鞭をとった教員らにより制作された参考作品や、実習教材などを紹介し、工芸王国石川の礎を築いた教育者たちの挑戦と苦悩の足跡をご覧いただきます。
第2章 教育思想の継承と発展
石川県立工業学校で実践された教育内容は、当時全国各地で開校が予定されていた工業・工芸学校の模範となり、県内外から多くの教育視察団が訪れました。また明治35年(1902)に図案絵画科内に設置された「工業図案所」は、教育と産業現場の橋渡しをする役割を担い、現代における産学連携のパイオニアとなりました。本章では納富介次郎の教育思想を継承することで、新たな時代の教育の在り方を模索し、石川県のみならず日本の工芸とデザイン教育を牽引した教育者たちの足跡をご紹介します。
第3章 工芸教育の現状と未来
金沢工業学校を嚆矢とする石川県の工芸教育は、その後金沢美術工芸専門学校(金沢美術工芸大学の前身)の開校、石川県の3つの工芸技術研修所(輪島・九谷・山中)の開設、石川県立工業高等学校工芸科の設置と、産業としての工芸から芸術としての工芸へ舵を取ります。本章では、戦後の復興期を経て現代に至る工芸とデザイン教育の様相について、公募展出品作品を中心に紹介します。作家と教育者双方の立場から、工芸王国石川誕生に至る確かな足取りを読み解くことで、工芸とデザイン教育の、未来に向けたあるべき姿について考察します。
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